村田沙耶香【地球星人】から受けた衝撃と希望の光【2021年6月読書レポート】
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真夏のような梅雨がやってきた6月
もう日本にあるのは四季、じゃないみたい。何もかもが変わってゆくけれど、本と向き合う時間だけは変わらない。
・現代社会と言う人間工場
・BBC 2020度ベストブック選出
・少数派だけど決して弱者ではない
▶今月読んだ本
▶おわりに 今月のオーディオブックから一言
今月の一冊は、【コンビニ人間】で芥川賞を受賞し村田沙耶香さんの衝撃作品【地球星人】です。
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村田沙耶香さんの世界は、常に現実社会の中でタブーとされていることが描かれている気がする。コンビニ人間も、殺人出産も、消滅世界も。これまで読んできた作品全てに、現実とタブーと、そして現実社会に、はみ出されてしまうような人物が登場する。
この【地球星人】に登場するのも、小学生の頃から家族や教師に精神的、性的虐待を受け続け、自分はポハピピンポボピア星からの密命を受けた魔法少女なのだと言い聞かせて生きていく主人公。
彼女はこの現実社会を、人間を作る工場だと考える。人間は、特に女性は、あらゆる意味でこの工場の道具に過ぎないことを理解し、それでもなんとか地球星人のように振る舞おうと、努力して生きてきた。
けれども、宇宙少女が地球星人を作る工場で生き続けるのはあまりに過酷で、結局は自分の星のやり方で生きることを選ぶようになる。そしてそのことによって起きる結果は、ここで表記するのも憚られるような顛末となってしまう。
この作品は、ぶっ翔んでるとか、気持ち悪いとか、そんな評価で終わってしまって良いものではないと思う。現実に、国を代表する政治家たちがマイノリティに対して、生産性がない、などと発言したりする。まさに現実社会も、工場でしかないと感じずにはいられないのです。
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地球星人は海外でも評価されています。イギリスの公共放送BBCは、「2020年の年間最高書籍」のひとつに選出。英語版のタイトルは「Earthling」
表紙は、主人公の奈月に地球を守る使命を託したという、ハリネズミのぬいぐるみの姿をしたポハピピンポボピア星人のピュート。これを表紙にするあたり、やはり外国の方のほうがこの作品を理解してくれる気がする。
何と言っても日本はマイノリティを受け入れるどころか、排除する国だからね。
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物語は救いようのないラストを迎えますが、村田さんの作品に登場するマイノリティに苦しむ主人公は、決して弱者であり続けないところに、未来があると私は考えます。
マイノリティだけど、そこで怯えながら生きるのではなく、自らが主導権を持って生き抜こうとする。多数派を俯瞰して見ている。だからいつの間にか、マイノリティであることすら感じさせなくなる。
私自身、これまでの何十年とこの工場の中で、かなり仕事の出来る道具だったはず。だけどある出来事をきっかけにして、いきなり不具合が生じ、マイノリティになってしまった。そこで初めて、マイノリティとしてこの工場で生き抜くことの辛さを痛感する日々を生きています。
SHOKO
この社会が人間工場であることは、恐らく変わらないだろうけれど、そこで壊れて使えなくなった道具も、他と同じように働けない道具も、全て受け入れて認める社会へと進んでいくこと。それがこの作品に込められた強烈なメッセージではないかと、感じています。
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▶▶炭水化物が人類を滅ぼす 著者 夏井睦
実は昨今の糖質制限ブームの陰の火付け役として知られている夏井睦氏。
自分の身体で糖質制限を試し、その効果や危険のなさを確かめた著者は、糖尿病の糖質制限治療の第一人者である江部康二氏と親交を深めながら、栄養素としての糖質の性質や、人類の糖質摂取の歴史、カロリーという概念やその算出法のいいかげんさ、そしてブドウ糖からみえてくる生命の諸相や進化などについて、独自の考察や研究を開始。
本書では、糖質からみた農耕の起源についても新説を展開、穀物栽培によって繁栄への道を得た人類が、穀物により滅亡への道をたどりつつあることも指摘している。
SHOKO
私が毎日記録している健康アプリでも炭水化物は三大栄養素のひとつだから、しっかり取るようにと毎日指摘される。だけど、実は炭水化物は三大栄養素と呼べるほど、私たちの体にとって必要な栄養素ではないことがわかりました。
そう、炭水化物は単なる「嗜好品」でしかない。これを多くの人に知ってもらいたい。
■目次
▶村田沙耶香【地球星人】の衝撃 社会と言う人間を作る工場で生きる私たちの未来・現代社会と言う人間工場
・BBC 2020度ベストブック選出
・少数派だけど決して弱者ではない
▶今月読んだ本
▶おわりに 今月のオーディオブックから一言
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現代社会と言う人間工場
恋愛や生殖を強制する世間になじめず、ネットで見つけた夫と性行為なしの婚姻生活を送る34歳の奈月。夫とともに田舎の親戚の家を訪れた彼女は、いとこの由宇に再会する。小学生の頃、自らを魔法少女と宇宙人だと信じていた二人は秘密の恋人同士だった。だが大人になった由宇は「地球星人」の常識に洗脳されかけていて…。芥川賞受賞作『コンビニ人間』を超える驚愕をもたらす衝撃的傑作。
ここは巣の羅列であり、人間を作る工場でもある。私はこの街で、二種類の意味で道具だ。
一つはお勉強を頑張って働く道具になること。
一つは女の子を頑張ってこの街のための生殖器になること。
私は多分、どちらの意味でも落ちこぼれなのだと思う。
一つはお勉強を頑張って働く道具になること。
一つは女の子を頑張ってこの街のための生殖器になること。
私は多分、どちらの意味でも落ちこぼれなのだと思う。
BBC 2020度ベストブック選出
Earthlings【電子書籍】[ Sayaka Murata ] 価格:1,729円 | ![]() |

少数派だけど決して弱者ではない

これまでのタブーを受け入れる社会へ
今月読んだ本
- ベルリンは晴れているか /深緑 野分
- 馬鹿と嘘の弓 /森 博嗣
- 瑠璃の雫 /伊岡 瞬
- まずはこれ食べて /原田 ひ香
- 東電OL殺人事件 /佐野 眞一
- 火口のふたり /白石 一文
- 結婚の奴 /能町 みね子
- 地球星人 /村田 沙耶香
- 新月譚 /貫井 徳郎
- あの日の交換日記 /辻堂ゆめ
- 黒猫王子の喫茶店 猫も歩けば誘拐される/高橋由太
おわりに 今月のオーディオブックから一言


糖質は嗜好品
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