緊急事態が平常みたいになってきた2月
これから先もずっとこのままなんじゃないかという不安をどこかに抱きながらも
読書ライフは変わらず心の安定剤です。
この作品を読む前からこんなクチコミを目にして、恐らく感動的な恋愛ものだと思っていました。だけど私が受けた印象はまるで違う。『生』について私たちに訴えかける非常に重たいテーマの作品でした。
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在宅医療の医師・藤原真紀の前に、元恋人の倉橋克秀が七年ぶりに現われた。ピアニストとして海外留学するため姿を消した彼がなぜ?真紀には婚約者がいたが、かつて心の傷を唯ひとり共有できた克秀の出現に、心を惑わせる。やがて、克秀は余命三ヶ月の末期癌であることが発覚。悪化する病状に、真紀は彼の部屋を訪れた…。すばる文学賞作家が描く、感動の恋愛長編。
かつての恋人が7年ぶりに現れ、その恋人が末期癌で、現在の婚約者との間で心が揺れた主人公が、どちらを選ぶのか。
そんなライトな恋愛映画のような、筋書きではないのです。この作品には、幼児虐待、終末医療、在宅看護と様々な現代の問題をはらんでいます。
幼少期に母親の死、父親の暴力、そして姉の死を経験し、自らの生命を断つその権利を得るために医師になった主人公。そんな彼女が終末期医療に携わり常に死と向き合いながら生きている。そして彼女の深い闇を唯一知る人物こそが、7年ぶりに再会した恋人。
物語の展開的にはセオリー通り、かもしれないけれど、その背景に潜むものが重たくのしかかる。その部分に、心が揺すぶられるのです。
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この作品をジャンル分けすると、
恋愛小説ジャンルになるらしい。
けれど、
恋愛小説の読後感とはまるで違うものでした。確かに、婚約者と昔の恋人の間で揺れる、という設定は
恋愛小説そのものなのだけど、どちらかと言うとその部分の重さが軽い。と言うか、登場人物がみな、向き合っているものが恋愛よりも、死なのだと思う。
もちろん一般的な
恋愛小説にも、死は重要なキーワードになることが多いけれど、この作品の中においては、最初から最後まで『死』を全面に感じるのです。だから私は恋愛小説、と位置付けることに違和感を感じます。
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主人公は幼少期の辛い体験から、自ら死を選びとる手段を得るために医者になる。この設定がこの作品に釘付けになったひとつの理由。
モルヒネ、という薬品は、その日のためのお守りのような存在。いつでもそれを使えると言う心の支え。だけど、昔愛した人が残り僅かな余命を生き抜くことなく、その切り札を切ろうとする時、彼女が何を想うのか。
SHOKO
人間は自分以外の誰かのためにしか生き続けるモチベーションを維持できない
当たり前のことかもしれないけれど、他者への『愛』が『生』なのだと感じずにはいられなかった。主人公がこの先自らの死を選ぶことはないだろうと、最後に思えたことが救い。
こんなにも苦しい世の中だけど、自分以外の何かへの愛を生きる力に、なんとか変えていきたい。
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今月読んだ本
モルヒネ /安達 千夏
唐沢家の四本の百合 /小池 真理子
カクレカラクリ /森 博嗣
春にして君を離れ /アガサ・クリスティー
迷宮百年の睡魔 /森 博嗣
かみさまは小学5年生 /すみれ
赤目姫の潮解 /森 博嗣
死との約束 /アガサ・クリスティ
つふやきのクリーム /森 博嗣
かみさまは小学5年生 /すみれ
さらさら流る /柚木麻子
魔力の胎動 /東野圭吾
わたしたちは銀のフォークと薬を手にして /島本理生
吉祥寺デイズ /山田詠美
14冊
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オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る
デジタル技術は社会の方向性を変えるものでは決してない。台湾の対策は政府と人々の信頼関係をベースにしてデジタルを活用することでうまくいきました。
冒頭のこの言葉からして、日本にはまず政府と人々の信頼関係というものが存在しない。デジタル云々よりも、まずはそこから?と思ってしまいましたが。
2020年に全世界を襲った新型コロナウイルス(COVID-19)の封じ込めに唯一成功した台湾の中心的な役割を担った若きデジタル担当政務委員オードリー・タン氏自身が、自らの考え、行動、夢を語った1冊。
日本でも数々のメディアが取り上げていますが、本書では、コロナ対策成功の秘密、デジタルと民主主義、デジタルと教育、AIと社会・イノベーション、そして日本へのメッセージを、自身の言葉で語りつくしています。
SHOKO
日本は、デジタルと全く融合できていないことが今回のコロナ問題で露呈されただけに、オードリー・タン氏の言葉はとても興味深い。ぜひとも政治家の皆様全員に熟読していただきたい。そんな時間がないのなら、
オーディオブックで聴き流せばいい。
ブロトピ:こんな記事書きました!
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