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    shoko

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    読書すらままならない暑さだった2020の8月

    これまでにないくらいの猛暑。日中に読書をする気分にはなれませんでしたが、夜の読書時間で8月も面白い作品に出会えました。


    今月読んだ本  

    • 切羽へ /井上 荒野
    • 存在の美しい哀しみ /小池 真理子

    • ジョーカー・ゲーム /柳 広司

    • 沈黙のひと /小池 真理子

    • 塩一トンの読書 /須賀 敦子

    • ダブル・ジョーカー /柳 広司

    • パラダイス・ロスト  /柳 広司

    • 二番目の悪者 /林木林

    • あなたに、大切な香りの記憶はありますか?/阿川佐和子他

    • ラスト・ワルツ /柳 広司

    • 歴史はバーで作られる /鯨 統一郎

    11冊


    今月の1冊 林木林【二番目の悪者

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    こちらは今話題の絵本。こども向けに書かれたものとは思えないほど、大人の、現社会にグサっと刺さる作品。


    金色のたてがみを持つ金ライオンは、一国の王になりたかった。 自分こそが王にふさわしいと思っていた。 ところが、街はずれに住む優しい銀のライオンが 「次の王様候補」と噂に聞く。 ある日、金のライオンはとんでもないことを始めた-―。 登場するのは動物ばかり。人間はひとりも出てきません。 けれど1ページ目はこの言葉から始まります。 「これが全て作り話だと言い切れるだろうか」

    考えない、行動しない、という罪

    これは絵本なのにハッピーエンドではありません。このお話の中の一番の悪者は、金のライオン。だけど、それ以外の動物たちの、何も考えず、自分の目で確かめない、という罪がなければ、こんな世界にはならなかった。まさに人間社会の縮図みたい。

    誰かにとって都合のよい嘘が
    世界を変えてしまうことさえある。

    たからこそ、なんどでもたしかめよう。

    あの高くそびえる山は、本当に山なのか。
    この川は、間違った方向に流れていないか。
    皆が歩いていく道の果てには、何が待っているのか。

    最後のこの1ページ。今のSNS社会に生きる私たちが心に留めておかなくてはいけない言葉ではないだろうか。誹謗中傷問題だけではない。誰かにとっての都合のよい嘘は、ひとりの人生や世界の在り方までを変えてしまう恐れがあるのだから。


    ▶▶二番目の悪者[本/雑誌] / 林木林/作 庄野ナホコ/絵

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    クールでスタイリッシュな柳広司さんのスパイミステリー【D機関シリーズ】

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    毎年8月になると戦争作品を読んでおかなくてはいけない、と言う思いにかられる。このジョーカー・ゲームをはじめとする柳広司さんのD機関シリーズも、昭和の戦争時代におけるスパイミステリー

    これまでの昭和の日本軍のスパイ活動のイメージを覆す、クールでスタイリッシュな描かれ方にぐっと惹き付けられるシリーズとなっています。

    著者の柳広司さんは、2009年この『ジョーカー・ゲーム』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞しています。今最も注目を集めるミステリ作家の一人と言われています。

    ジョーカー・ゲーム

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    シリーズの始まりは、常人離れした精鋭集団D機関にジョーカー・ゲームを仕掛けられる軍人の話から。彼らを率いるカリスマ結城中佐の悪魔的な魅力にグイグイ惹き付けられていきます。


    結城中佐の発案で陸軍内に極秘裏に設立されたスパイ養成学校“D機関”。「死ぬな、殺すな、とらわれるな」。この戒律を若き精鋭達に叩き込み、軍隊組織の信条を真っ向から否定する“D機関”の存在は、当然、猛反発を招いた。だが、頭脳明晰、実行力でも群を抜く結城は、魔術師の如き手さばきで諜報戦の成果を上げてゆく......。 吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞に輝く究極のスパイ・ミステリー

    フィクションだとわかっていながらも、かつて日本にこのようなスパイ養成機関があったのではないかとリアルに感じてしまう。スパイ活動に派手なアクションがなく、クールな頭脳戦であることが、海外のものよりもなんだかスタイリッシュに感じられ、のめり込んでしまいました。


    ▶▶【中古】ジョーカー・ゲーム / 柳広司

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    ダブル・ジョーカー

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    第2段は更に面白さを増します。ほぼノンストップで読了しました。

    結城中佐率いる“D機関”の暗躍の陰で、もう一つの秘密諜報機組織“風機関”設立された。だが、同じカードは二枚も要らない。どちらかがスペアだ。“D機関”の追い落としを謀らんとする風機関に対し、結城中佐が放った驚愕の一手とは――。

    今作では結城中佐自身がスパイ活動をしていた時の話が登場します。これまでスパイ小説でありながら、派手な脱出やアクションシーンはほとんど見られなかったけれど、結城中佐の過去においては、珍しく派手な演出もあり、その部分もとても興味深い。


    ▶▶【中古】ダブル・ジョーカー / 柳広司

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    パラダイス・ロスト

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    シリーズも3作目となると、少々飽きがくるのではないかと思いきや、そんな心配無用でした。ますます面白くなるって、スゴい。

    大日本帝国陸軍内にスパイ養成組織“D機関”を作り上げ、異能の精鋭たちを統べる元締め(スパイ・マスター)、結城中佐。その正体を暴こうとする男が現れた。英国タイムズ紙極東特派員アーロン・プライス。結城の隠された生い立ちに迫るが......(「追跡」)。ハワイ沖の豪華客船を舞台にした初の中篇「暗号名ケルベロス」を含む全5篇。世界各国、シリーズ最大のスケールで展開する。究極の頭脳戦!

    今作では、かなり長めの中編小説が含まれていて、それが読み応え十分。これまで全て短編でしたが、やはりこの作品はひとつひとつ、長編で描いてくれたらもっと楽しめるのではないかと改めて思う。


    ▶▶ 【中古】 パラダイス・ロスト ジョーカー・ゲームシリーズ 角川文庫/柳広司【著】

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    ラスト・ワルツ

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    現時点でのこのシリーズ最終作。このあたりでネタ切れ感があるかと思いましたが、今作では、これまでとは少し違った視点からのストーリーも見られ、まだまだD機関は終わらない、と確信しました。

    華族に生まれ陸軍中将の妻となった顕子は、退屈な生活に倦んでいた。アメリカ大使館主催の舞踏会で、ある人物を捜す顕子の前に現れたのは――(「舞踏会の夜」)。 ドイツの映画撮影所、仮面舞踏会、疾走する特急車内。帝国陸軍内に極秘裏に設立された異能のスパイ組織“D機関”が世界で繰り広げる諜報戦。ロンドンでの密室殺人を舞台にした特別書き下ろし「パンドラ」収録。スパイ・ミステリの金字塔「ジョーカー・ゲーム」シリーズ!


    女性からの視点。こうした描き方も出来るのだと、新たなD機関の可能性を発見。現時点では、こちらの作品がラストになっているけれど、これからは長編を一作ずつ出してくれたら嬉しい。

    東野圭吾さんのガリレオシリーズのようなイメージで。まだまだD機関の世界を堪能したいと切に願います。

    ▶▶【中古】ラスト・ワルツ / 柳広司

    SHOKO

    COOL JAPAN


    不謹慎かもしれないけれど、シリーズを通しての感想は、SO COOL。時代背景が昭和のあの戦争時代なのに、それを感じさせないクールさがあり、とにかくカッコいい。

    ジョーカー・ゲームは映画化もアニメ化もされていますが、映画の伊勢谷友介さんがD機関設立者であり、魔王と呼ばれる結城中佐のイメージにぴったり。あまりにハマっているので、予告動画をリンクしておきました。



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    おわりに

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    私は香り、というものに非常に敏感。だからこそタイトルに惹かれて手に取ってみたこちらの作品は、人気作家8人(阿川佐和子、石田衣良、角田光代、熊谷達也、小池真理子、重松清、朱川湊人、高樹のぶ子)が「記憶の中の忘れがたい香り」をテーマに競作したアンソロジー。

    好きな作家の作品はもちろん、これまでに読んだことのなかった熊谷達也さんの『ロックとブルースに還る夜』の香りの記憶、素敵でした。

    自分の、『記憶の中の忘れがたい香り』を思い起こしてみたら、意外とドラマチックになるかもしれない、なんて思ったりして。

    ▶▶【中古】 あなたに、大切な香りの記憶はありますか? 文春文庫/アンソロジー(著者),阿川佐和子(著者),石田衣良(著者),角田光代(著者),熊谷達也(著者),小池真理子(著者),重松清

    ブロトピ:こんな記事書きました!


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