【2018年3月読書レポート】私にも読める社会派的作品3選
3月はとても忙しくて思うように本を読む時間が取れなかったけれど、電車の中やカフェでの空き時間にも本を持ち歩いて読むようにしていました。作品にのめり込んでいると移動時間も待ち時間もあっと合う間に過ぎてしまいます。
3月に読んだ本
・黒猫の三角/ 森 博嗣
・人形式モナリザ/ 森 博嗣
・フライ、ダディ、フライ/ 金城 一紀
・SPEED/ 金城 一紀
・星か獣になる季節/ 最果 タヒ
・夜空はいつでも最高密度の青色だ/ 最果 タヒ
・総理にされた男/ 中山 七里
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まずは大好きな中山七里さんの【総理にされた男】
・クラウドクラスターを愛する方法/ 窪 美澄
・反社会品/ 久坂部 羊
・嗤う名医/ 久坂部 羊
・象の背中/ 秋元康
・GOSICK ―ゴシック―/ 桜庭一樹
・GOSICK II ゴシック その罪は名もなき / 桜庭一樹
・真夜中のパン屋さん 午前4時の共犯者/ 大沼 紀子
・静かな雨/ 宮下 奈都
・にじいろガーデン/ 小川 糸
16冊 160ページ/日
今月イチの作品は、宮下奈都さんの【静かな雨】です。
2016年本屋大賞で第一位を獲得した【羊と鋼の森】の作者のデビュー作。私にとっては宮下奈都さんと出会った初めての作品。事故で高次脳機能障害になってしまった女性とその女性を愛する男性のふたりの物語。記憶が出来ない病気がテーマにある作品は他にもいくつか読んだことがありますが、大抵がものすごく悲しい物語。だけどこの【静かな雨】は悲しみより温かさを1番に感じる作品。
「忘れても忘れても、ふたりの世界は失われない」
帯にあったこのフレーズ。まさに。その通り。その日の記憶が明日にはなくなっても世界はそのままちゃんと存在する。だからこれからも、ふたりは大丈夫。そんな風に思えたのです。
宮下奈都さん、優しい言い回しでお人柄が想像できます。これからも沢山の作品を読んでみたいと思わせる作家さんでした。
余談ですが、同じタイトルでB'zの稲葉さんが作っている曲がありました。これも素敵。
私は普段ニュースも新聞もほぼスルーの完全に社会情勢とは切り離された生活を送っているのですが、今月は少し趣向を変えて社会派な作品も読んでみたので珍しくちょっとだけ社会派的作品をピックアップしました。
中山七里【総理にされた男】

総理大臣と瓜二つの売れない俳優である主人公が、本物の総理に成り代わって政治を動かしていく立場に立たされる話。こうしてワンセンテンスで内容を説明できるほど、わかりやすいお話なのですが、そこに中山七里さんの思惑があるのです。日本の政治を面白くわかりやすく書きたかった、と言うのがこの作品のスタート地点。
暴言失言問題、消費税・法人税問題、官僚問題、原発問題、集団的自衛権問題、などなど現実の政治問題の数々に対面していく政治のド素人である主人公。素人が政治を動かすなんて無理があると思いきや、さまざまな局面に対応していくのは、主人公の言葉の力。政治は基本的に言葉だ、と中山さんが語るように言葉は日本を動かすのかもしれない。
今の日本で、言葉で国民の心を動かせるような人がいるだろうか。政治に関心を全く持っていなかった私でも、1度ちゃんと政治家の言葉に耳を傾けてみようかなんて思い始めているのです。それこそが、中山七里さんの言葉の力。いつもとは違う社会的テーマの作品を読んでみようと思った方にオススメの作品です。
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久坂部羊【反社会品】
【無痛】や【破裂】で知られる現役医師である久坂部羊さん。先月同じく医師である知念実希人さんをピックアップしましたが、同じお医者さんが書く作品であっても全く異なる世界観。久坂部羊さんのこの短編集は、どれも今の現実の社会問題と医療を見事に掛け合わせた、非常に不気味で恐ろしい作品です。
高齢化社会、少子化問題、骨髄バンク、出生前診断。どれも大きな現実的社会問題。それらを久坂部さんらしいブラックサイドに引き込む形で表現しています。ニュースで聞いたことのある話の現実はこうなのか、と全てが恐ろしくなる。読んだ者に問題意識を持たせる。そんな意味では、私のようにニュースも知らない人間にとって大事な作品でした。
私も十分、反社会品です。
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最果タヒ【夜空はいつでも最高密度の青色だ】
最後は先月に引き続き、最果タヒさん。これは社会派と呼ぶには少し違和感を感じるかもしれない。最果タヒさんの詩は、多分、社会がどうとか、政治が、経済が、世の中が、なんてことを叫んでいない。だけどいつでも若者が死を考えたり、抜け出せない闇を思ったり、日常のヒトコマにふと思うことを言葉にして紡いでくれてる。もしかしたらここにある言葉のひとつひとつを切り取ったら、生きにくい現代をなんとか生きようとする人たちのヒントになると思うのです。
都会を好きになった瞬間、
自殺したようなものだよ。
塗った爪の色を、
きみの体の内側に探したって
みつかりやしない。
夜空はいつでも最高密度の青色だ。
きみがかわいそうだと思っている
きみ自身を、
誰も愛さない間、
きみはきっと世界を嫌いでいい。
そしてだからこそ、
この星に、
恋愛なんてものはない。
【青色の詩】より
映画【夜空はいつでも最高密度の青色だ】
最果タヒさんの詩集にはストーリーがないのだけれど、この詩集の世界観をベースに脚本が描かれ、映像化されました。2017年に公開され、数々の映画賞を受賞。ヨコハマ映画祭作品賞、キネマ旬報日本映画ベストテン1位や監督の石井裕也氏はアジア・フィルム・アワードでも監督賞を受賞するなど、2017年の日本映画界に大きなな痕跡を残しています。
主人公のふたりくらいの年齢だったとき、私はここに出てくる混沌の世界を知らなかった。私の周りにあったのはカオスではなくコスモス。明瞭な秩序のある世界。その世界にだけ存在した時はこの映画の世界観をわからなかったと思う。だけど今は幸か不幸か、この混沌が理解できる上に共感できる。
生きるのって苦しい。
だけど、出会いと言葉は生きることに何らかの彩りを与えてくれるんだって。私はこの作品から感じたのです。
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ブロトピ:こんな記事書きました!
まとめ
今月金城一紀さんのゾンビーズシリーズ三部作を読み終えました。そして森博嗣さんのVシリーズと桜庭一樹さんのGOSICKシリーズをスタート。他にも大沼紀子さんの真夜中のパン屋さんもシリーズの途中。シリーズものは長い間その世界にのめり込めるから、大好き。私にとってはやっぱり社会派作品よりも、現実から逃避した世界に没頭できることのほうが大切なようです。
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